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東京高等裁判所 昭和43年(ラ)645号 決定 1969年5月21日

抗告人 近藤康美

右訴訟代理人 今泉昌治

主文

原決定中抗告人の申立を却下した部分を取消す。

債権者近藤康美債務者株式会社東京エレクトリック第三債務者株式会社富士銀行間の東京地方裁判所昭和四三年(ル)第二七二四号同年(ヲ)第三〇三八号債権差押命令及び転付命令申請事件につき同裁判所が同四三年五月三一日になした債権差押命令及び転付命令のうち差押債権目録に表示する(三)の約束手形の支払期日「昭和四三年三月二五日」とあるのを「昭和四三年三月二〇日」と更正する。

理由

抗告人の本件抗告理由は本件抗告申立書のうち「抗告の趣旨」及び「抗告の理由」の欄を引写した末尾添付の書面記載の通りである。

按ずるに、抗告人は同人を債権者とし、株式会社東京エレクトリックを債務者として公正証書に基づく貸金債権について株式会社富士銀行(高円寺支店)を第三債務者とする別紙目録の第三約束手形を含む合計四通の約束手形の不渡処分を免れるため社団法人東京銀行協会に提供する目的で第三債務者に預託した預託金返還請求権の差押命令及び転付命令を申請し(同庁昭和四三年(ル)第二七二四号同年(ヲ)第三〇三八号事件)右債権差押命令及び転付命令を得たところ、右の被差押債権の表示における第三約束手形の満期の記載において「昭和四三年三月二〇日」と記載すべきところを「昭和四三年三月二五日」と誤記したので、その更正を求めた(なおその余の更正も求めたところこれについては原裁判所は認容して更正決定したのでその部分については不服申立はない)ところ、原裁判所は右の部分の更正の申立を却下したので当裁判所に対して本件抗告をしたものである。

一件記録を調べてみると、右債務者の第三債務者に対する預託金返還請求権の基本となる右預託の目的である不渡処分を免れるための約束手形は合計四通であって、記録に添付されている(一九丁、二〇丁)の昭和四三年八月二七日付及び同年九月六日付の第三債務者株式会社富士銀行高円寺支店の記名押印ある各証明書によれば同銀行(同支店)に対して債務者が預託した担保によって不渡処分を免れるための債務者振出の約束手形は右の四通のほかにはないところであって、右の四通の約手のうちの一通である別紙目録の第三約束手形の満期は昭和四三年三月二五日ではなく同年三月二〇日であることは同銀行が右証明書により証明するところである。従って、抗告人が原裁判所に対してなした債権差押命令及び転付命令申請において右第三約束手形の満期の記載を昭和四三年三月二〇日と記載すべきところを誤って昭和四三年三月二五日と誤記したものと認められるので、ひいて抗告人が更正を求める前記差押債権目録の記載も誤記されたものとみるのが相当であり、これと異なる見解に出た原決定は失当であるから取消し、主文の通り決定することとする。

(裁判長判事 川添利起 判事 荒木大任 長利正己)

<以下省略>

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